ロイペンと、まちへ届けるカケラ

絵本『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』表紙

『ロイペンの しあわせを運ぶ旅』第3話。分かち合ったしあわせを、宮殿の外、ブドウ島のまちへ届けに行くお話です。

1ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』1ページ目の挿絵

朝になりました。ロイペンが窓辺を見ると、昨夜置いた返事の手紙が、ありませんでした。残っていたのは、ほんの少しの、金色の光の粉だけ。
ロイペン「あれ……? わたしの手紙、どこへ行ったのラン……? 風が、運んでくれたのかしら」
誰が持って行ったのかは、わかりません。でもロイペンは、なんだか嬉しくなりました。手紙は、旅立ったのかもしれません。

2ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』2ページ目の挿絵

ロイペン「みんなと分かち合ったしあわせ、今度は宮殿の外にも届けたいのラン♪ ブドウ島のまちには、まだ会ったことのない住人たちがいるのラン」
ペンギン妖精たち「まちまで……? 王様が、宮殿を出るの……?」
ロイペン「ええ。しあわせは、届けに出るものなのラン♪」

3ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』3ページ目の挿絵

出かける支度が始まりました。バスケットには、温かいロイヤルミルクティー。そしてロイペンの羽には、みんなの想いのカケラの光。
ペンギン妖精「王様、今日は飛んで行くの?」
ロイペン「今日は、歩いて行くのラン。自分の足で、一歩ずつ。まちのみんなの顔を、ちゃんと見たいのラン♪」

4ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』4ページ目の挿絵

ロイペンは、坂道を一歩ずつ下りていきました。いつもは空から見ていたぶどう畑も、歩いて通ると、葉の香りがして、実の色がひとつずつ違って見えます。
ロイペン「歩いて来ると、こんなに素敵な道だったのラン♪」

5ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』5ページ目の挿絵

まちに着きました。小さな店の並ぶ通り。みんなが集まる広場。軒先では、もうすぐ始まるぶどう祭りの支度が進んでいました。
ロイペン「まちのみんな、はじめましてなのラン♪」

6ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』6ページ目の挿絵

ぶどう畑の片隅で、大きなカメが休んでいました。朝からずっと働いて、少し疲れてしまったようです。
ロイペン「お疲れさまなのラン。温かいお茶、どうぞなのラン♪」
ロイペンは、ロイヤルミルクティーを注ぎ、羽の「ぬくもり」の光を、そっと分けました。
カメ「ああ……温かいねえ。心まで、ぽかぽかしてくるよ」

7ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』7ページ目の挿絵

カメは元気になって、隣の畑の住人に声をかけました。「今日は、いい日になりそうだよ」ぽかぽかは、宮殿の中と同じように、まちでも、ひとつずつ隣へ広がっていきました。
ロイペン「ほら、広がったのラン♪ まちでも、輪になるのラン」

8ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』8ページ目の挿絵

広場の片隅では、小さなモグラがひとりで座っていました。にぎやかな広場なのに、なんだか少し、さみしそうです。
ロイペン「隣に座ってもいいラン? ……ねえ、聞こえるラン? 優しい音は、心と心をつないでくれるのラン♪」
「音色」のカケラの光が、モグラのまわりを、そっと包みました。
モグラ「なんだか……そばにいてくれるみたい……」

9ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』9ページ目の挿絵

ぶどうの木の下では、小さなリスが高い枝を見上げていました。一番おいしそうなぶどうは、一番高いところにあります。でも、登るのは少し怖いようです。
リス「わたし……行けるかな……」
ロイペン「大丈夫なのラン。怖い気持ちのままでいいのラン。一歩だけ、踏み出してみるのラン♪」
リスは、小さなランプの光に照らされながら、枝へ、一歩を踏み出しました。

10ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』10ページ目の挿絵

昼下がりの広場に、遠くの塔の音が届きました。とん、とん、とん。うんのしまの真ん中で刻まれる、いつもの穏やかなリズムです。まちのみんなも、ロイペンも、しばらく耳をすましました。
ロイペン「この音が聞こえる日は、島は大丈夫なのラン♪ いつもの音が、いちばんの安心なのラン」

11ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』11ページ目の挿絵

帰り道、郵便ポストのそばで、配達員のフクロウが休んでいました。
フクロウ「今朝のことなんだけどね。宛名のない手紙が一通、風に運ばれて、丘の向こうへ飛んでいくのを見たんだよ。誰の手紙だったのかは、わからないけれどね」
ロイペンの胸が、少しだけ高鳴りました。あの手紙かどうかは、わかりません。でも、宛名のない手紙は、確かにどこかへ向かって、飛んでいたのです。
ロイペン「教えてくれて、ありがとうなのラン……♪」

12ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』12ページ目の挿絵

夕方、まちのみんなが、お礼の贈りものを届けてくれました。ぶどうの花束と、しぼりたてのぶどうジュース。
カメ「王様、今度はぶどう祭りにも来てね。まちのみんなで、待っているよ」
ロイペン「ありがとうなのラン♪ カケラは、分けるたびに増えていくのラン。もらう温かさも、こんなにたくさん……」

13ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』13ページ目の挿絵

夕日の中、ロイペンは帰り道を歩きました。バスケットの中身は軽くなったのに、心は帰る前より、ずっと温かく、重くなっていました。まちの窓々には、明かりが灯り始めています。
ロイペン「まちのみんなの明かり、ひとつひとつが、カケラみたいなのラン♪」

14ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』14ページ目の挿絵

宮殿に帰ると、ペンギン妖精たちが出迎えてくれました。ロイペンは、まちで出会ったみんなのことを、ひとつひとつ話しました。
ロイペン「まちのみんな、とっても素敵だったのラン♪ 王様はね、宮殿の中にいるだけじゃないのラン。みんなのところへ、出て行くものなのラン」

15ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』15ページ目の挿絵

その夜、ロイペンは窓辺に立ちました。星空の中を、金色に光る小さな羽が一枚、風に運ばれて、遠くへ流れていきます。誰の羽なのかは、わかりません。手紙を運んでいるのかも、わかりません。
ロイペン「手紙さん……。今ごろ、どこへ向かっているのラン……」
羽は、夜の闇の向こうへ、そっと消えていきました。

16ページ目

『ロイペンと、まちへ届けるカケラ』16ページ目の挿絵

次回――『ロイペンと、ぶどう祭りの贈りもの』まちのみんなと祝う、収穫のお祭り。ロイペンは今度、どんなしあわせを届けるのでしょう。そして、風に運ばれた手紙は、どこへ届くのでしょう。
ロイペン「次もお楽しみになのラン♪」