ラキソウくん個人シリーズ 第3話。
ZINE第3話のラキソウくん側のお話です。芽が出たタネと、育てる木のお話。
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ペパーミン島の草原に、朝が来ました。遠くの塔の音が、いつもどおり、まっすぐ届いています。ラキソウくんは、その音を聞きながら、ふたつの「育つもの」のことを思いました。ひとつは、にこっちが育て始めた木。もうひとつは、森の土で芽を出した、あのタネです。
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「ふわり〜。ねえ、ポンちゃん。にこっちね、拾った石の中に眠っていたタネを、土に植えたんだって。毎朝、水をあげて、声をかけているらしいよ」動く人の風は、丘まで届きます。その風の中に、水の音と、明るい声が混ざっていました。
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ラキソウくんは、風に乗りました。草原を越えて、海を越えて。今日は、森の芽の様子を見る日です。にこっちの木も、近くで見られるかな。そんな気持ちで、トマ島へ向かいました。
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分かれ道の近くの、小道のわき。芽は、双葉の頃より少し背が伸びて、新しい葉を広げていました。そのとき、遠くの塔の音が、森を渡ってきました。芽の葉が、そのリズムに合わせて、そっと揺れます。「聞こえてるんだね、ふわり〜。塔の音は、島のどこにいても届くんだ」
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にこっち「おはよう! 今日もがんばろうね」
ラキソウくん「ふわり〜、いい声だね。うんはね、ふってくるだけじゃない。そだてるものでもあるんだよ」
にこっち「うんって、ふってくるだけじゃないの?」
ラキソウくん「もらったうんを、どう生かすか。それが、”うんを育てる”ってことなんだ」
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雨の日が来ました。にこっちは、自分の傘を木にさして、ずっとそばにいました。ラキソウくんは、葉っぱの影から見守ります。手を出したら早いこともあるけれど――育てる心は、自分で守る日に育つのです。
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にこっち「うまくいかない日も、あるんだね……」
ラキソウくん「大丈夫。がんばったぶん、ちゃんと根っこになるよ」根っこは、見えないところで育ちます。ラキソウくんは知っていました。森の芽も今、土の中で、同じように根を伸ばしていることを。
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気がつけば、時間がたっていました。にこっちの木は、すこしずつのびています。森の芽も、新しい葉を増やしていました。ふたつの育つものは、遠く離れた場所で、同じ塔の音を聞きながら育っています。「あっちも、こっちも、すくすくだね。ふわり〜」
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ある日、木の枝に、小さな光の実がなりました。「これ…『うんのみ』!?」「そだてた”うん”は、なんだかあったかいね」ラキソウくんは、少し離れたところで微笑みました。そして、森の芽のことを思います。あの芽も、いつか――。
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夕方、ラキソウくんは、芽の前に立っていました。にこっちは、育てることを覚えました。守る日も、うまくいかない日も、そばにいることを覚えました。「……もう、見せてもいい頃かな。この芽のことも、一緒に見守ってほしいな、ふわり〜」ラキソウくんは、決めました。明日、にこっちを、ここへ連れてこよう、と。
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ラキソウくん「ねえ、にこっち。見せたいものがあるんだ。ぼくと一緒に、森へ行かない?」
にこっち「見せたいもの? なになに、気になる〜!」ふたりは、森の小道を歩き始めました。にこっちの木に「いってきます」を言ってから。
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分かれ道の大きな木の前を通って、小道のわきへ入っていきます。後ろには、にこっちの育てる木。この先には、芽のある場所。ラキソウくん「芽と木のあいだを歩くのは、今日が初めてだね」
にこっち「芽……?」
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にこっち「わあっ! こんなところに、芽が出てる!」
ラキソウくん「ふわり〜。実はね、この芽――出会った日、ぼくが森の土に落としたタネが、芽を出したものなんだ」
にこっち「あの日からの、芽だったんだ……!」芽は、ずっとここで、ふたりの毎日を見守ってきたのでした。
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にこっち「これからは、わたしも一緒に見守るね!」
ラキソウくん「ありがとう。育つものはね、見守る人が増えると、もっと育つんだ、ふわり〜」そのとき、遠くの塔の音が、森を渡ってきました。芽の葉が揺れて――遠くのにこっちの木の葉も、同じリズムで揺れています。ふたつの育つものが同じ音に応えるのを見て、ラキソウくんは、ふわりと笑いました。その先の話は、まだ、もう少し先のお話です。
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「ポンちゃん、今日ね、芽をにこっちに見せたよ。秘密が、ふたりの見守りに変わったんだ」ポンちゃんは、ケロッと鳴きました。丘の風が、芽吹きと実りの知らせを、そっと運んでいくようでした。
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次回――『ラキソウくんと、実りの届け方』。うんのみを届ける旅と、森で育ちつづける芽のお話。「ふわり〜。お楽しみに」

