ラキソウくんと、実りの届け方

ラキソウくん個人シリーズ 第4話。

ZINE第4話のラキソウくん側のお話です。うんのみを届ける旅と、森で育ちつづける芽のお話。

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ラキソウくん 挿絵1

ペパーミン島の草原に、朝が来ました。遠くの塔の音が、いつもどおり、まっすぐ届いています。草の色が、ほんの少しだけ変わり始めた丘で、ラキソウくんは、風の知らせを聞きました。にこっちの木に、実がなった――。育てる日々の、その先の季節が、もうすぐ始まろうとしています。

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ラキソウくん 挿絵2

森の芽は、今日も育っていました。新しい葉が増えて、茎の先には、小さなつぼみ。
ラキソウくん「つぼみだね、ふわり〜。でも、急がなくていいんだよ。実りの季節は、来るべきときに来るからね」
芽は、塔の音に合わせて、そっと揺れました。

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ラキソウくん 挿絵3

にこっちは、「うんの木」から生まれた光る実を、そっと手に取りました。それは、自分でそだてた「うん」でした。
にこっち「この“うん”、どうしようかな?」
ラキソウくん「ふわり〜。いい実がなったね」

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ラキソウくん 挿絵4

ラキソウくん「うんはね、じぶんの中にとどめてもいい。でも、だれかに“はこぶ”と、もっとふえるんだ」
にこっち「うんを…はこぶ?」
ラキソウくんは「運を育てる者」です。でも、育てたものを、どう届けるか――それは、ラキソウくんにとっても、まだ学びの途中のお話でした。

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ラキソウくん 挿絵5

ラキソウくんが、光の実を空にぽんっと投げると、実はパッとはじけて、小さな光の粒が、森に広がりました。
ラキソウくん「うんはね、“だれかを思う”気持ちで、とどけることができるんだよ」
にこっち「わたしも、やってみたい!」

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ラキソウくん 挿絵6

にこっちは、小さなカゴに「うんのみ」を入れて、森をでかけました。町へ向かって。ラキソウくんは、少し離れたところから、見送ります。届けるところを、近くで見てみたい。育てる者の、静かな願いでした。

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ラキソウくん 挿絵7

町では、転んだ子がいました。にこっちが、そっと手を差し出すと、カゴの「うんのみ」が、ほわっと光ります。
ラキソウくん「ふわり〜。届けるって、ものを渡すことだけじゃないんだね……」

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ラキソウくん 挿絵8

落とし物を届けると、町の人の心が、やさしくひらきました。ひとつ、またひとつ。にこっちの小さなやさしさのたびに、うんのみは光を増していきます。ラキソウくんは、木陰で頷きました。届けるたびに、光が増える。それが「はこぶ」ということなのだと。

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ラキソウくん 挿絵9

いくつもの「届ける」のあと、にこっちの背中に、光の羽のようなものが見え始めました。
にこっち「なんだか、からだがふわっとしてきた!」
ラキソウくん「“はこばれたうん”は、またどこかで、だれかの“うんのタネ”になるんだ。……ぼくも、覚えておこう。ふわり〜」

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ラキソウくん 挿絵10

気がつけば、町のあちこちに、小さなうんの芽が出ていました。にこっちの“うん”は、いつのまにか、たくさんの場所にひろがっていたのです。ラキソウくんは、森の芽を思いました。届けた先でも、育つものが生まれる。育つものは、また届けられる日を待つ。その輪が、少し見えた気がしました。

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ラキソウくん 挿絵11

「ありがとう」 にこっちに向けられたその言葉は、温かい風になって、森のほうへ流れていきました。ラキソウくんは、その風を見つけます。届けるものは、ものだけじゃない。気持ちも、風に乗って届くのです。
ラキソウくん「この風……森の芽にも、届けてあげたいな」

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ラキソウくん 挿絵12

夕方、ラキソウくんは森へ戻りました。ありがとうの風が、芽のところまで届いて――小さなつぼみが、そっと揺れて、かすかに光りました。でも、つぼみは、つぼみのままです。
ラキソウくん「実りは、急がない。今日は、気持ちだけ届いたら、それで十分だね。ふわり〜」
ポンちゃんが、ケロッと鳴きました。

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ラキソウくん 挿絵13

帰り道、ふたりは並んで歩きました。
にこっち「うんって、まわしていけるんだね」
ラキソウくん「そう、うんは“まわる”もの。はこぶことで、ふえるんだよ。育てて、届けて、また芽吹く。その輪のまんなかに、ぼくたちはいるんだね」

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ラキソウくん 挿絵14

空には、うんの光が広がっていました。今日のにこっちは、“じぶんだけのうん”を、“だれかのうん”にしました。そしてラキソウくんは知りました。届けることは、育てることの続き。実りの届け方とは、思う気持ちを、風に乗せることなのだと。遠くの塔の音が、いつもどおり届いています。芽も、木も、町の芽も、同じ音を聞きながら、育っていきます。

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ラキソウくん 挿絵15

ラキソウくん「ポンちゃん、今日ね、わかったんだ。届けるって、育てることの続きだったんだよ。森の芽のつぼみにも、町の“ありがとう”を届けてきたよ。実る日は、まだ先。でも、きっと来る。ふわり〜」
ポンちゃんは、ケロッと鳴きました。丘の風が、実りの知らせを、そっと運んでいくようでした。

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ラキソウくん 挿絵16

次回――『ラキソウくんと、実りのしまい方』実りをそっとしまう、お話と、つぼみを見守る季節のお話。「ふわり〜。お楽しみに」