ラキソウくん個人シリーズ 第1話
『Destiny ZINE 第1話』で、にこっちが出会ったラキソウくん。その出会いの前日からの、ラキソウくん側のお話です。
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ペパーミン島の草原に、「運の種」と呼ばれる存在がいます。その名は、ラキソウくん。今日も、風の音に耳をすましています。
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「ふわり〜。ぼくの仕事はね、動いた人のところへ、風に乗って行くこと。じっとしている人のところには、風は吹かないんだ」
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昨日の夕方、遠くのトマ島のほうから、小さなため息が風に乗って届きました。「うんがいいって、どういうことなんだろ?」誰かの、モヤモヤした気持ちでした。
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「ん? いま、ぼくの中の種が動いた。……この感じ、久しぶりだな。誰か、動き出しそうな人がいる」
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でも、ラキソウくんはすぐには飛び出しません。運の種は、本人が「動く」と決めるまで、そっと待っているのです。
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その夜、トマ島の明かりは、いつもより長く灯っていました。誰かが、考えて、考えて、そして決めた夜でした。
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「来た! 誰かが、朝いちばんに動き出した。この風は、その合図だ」
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「よし、タネも持った。出会いの先で、何が育つかは、お楽しみだね、ポンちゃん」ポンちゃんは、ケロッと鳴いて見送りました。
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風に乗ると、島の景色が流れていきます。草原を越えて、海を越えて、トマ島の緑の丘が見えてきました。
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森の中では、ひとりの冒険家が歩いていました。「うんくん、どこにいるの〜?」その声が、森に響いていました。
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しばらくして、声が止みました。葉っぱ、石ころ、つまずいた靴。思うように見つからなくて、気持ちがしぼんでいく気配がします。「……今だね。しょんぼりの底で、それでも歩いてきた人のところに、運は行くんだ」
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「こんにちは。風が運んできたのは、きみだったんだね」こうして、運命の庭――トマ島の森の小さな広場で、行動と偶然のふたりは出会いました。
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「そう。ぼくは”うん”のタネ。でも、じっとしてるだけの人のところには行かないんだ。きみが動いたから、風が吹いたんだよ」
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ふたりは一緒に、森をぬける小道を歩きました。ラキソウくんは、帰り際に、小さな光のタネを一粒、森の土にそっと落としました。
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「このタネが芽を出すのは、もう少し先の話。きっと、きみ自身が見つけて、育てることになる。……その日が楽しみだな」
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次回――『ラキソウくんと、育つものの見守り方』。落としたタネと、分かれ道で選ぶ心のお話。「ふわり〜。お楽しみに」

